今の僕はエコノミックアニマルを地で行く。
仕事させろ!そして僕にユーロを獲得させろ!!
そんな感情が芽生えたのは3週間ほど前の
ある事件がきっかけだった。
5月、カメラが壊れた。突然だったが、日本で2年前に8万円で買ったカメラで
そんなものをイタリアでの仕事に使っていた。
日本だったらこんな選択肢はない。
ただ長い休暇のつもりでイタリアにやってきた僕にとって
ここで仕事をするという状況は予想していなかったので
そんなカメラしか持って来ていなかった。
しかしここイタリアではこのカメラで通用してしまう。日本製ってすごい。
この金額でプロみたいにきれいな写真が!すばらしい☆
でも案の定、シャッターの切り過ぎでいかれてしまった。
まぁ2年間、よく頑張ってくれたと思う。
ただこうしている間にも仕事がある。なんとかしなければ・・・
シチリアにあるプロショップとは名ばかりの、写真機材屋に行く。
めぼしいカメラを既にネットでチェックしていたので
そのカメラがあるか店員に聞く。
「う~ん、2週間後になれば入ってくるかなぁ・・・
金額?多分2800ユーロ(約40万円)かなぁ」
この曖昧な返事に僕は、大いに慌てた。
「やばい・・・こりゃ1ヶ月待っても手に入んないな」
次の手を打たなくては。
思案していたら、アメリカにいる友人がネット購入の方法を教えてくれた。
かなり安い。日本より安いんじゃないか?さっそく手続き。
ところがトラブル発生。
日本のカードを使って、アメリカで買って、それをイタリアに送るには
色んな手続きが必要らしく、かなり時間がかかってしまいそうだった。
購入を断念した。
そして最後の手段。
「日本から持って来てもらう」まぁこれが一番だな。
東京にいる彼女に電話する。
「あのさぁ・・・今月(5月)中にシチリアに来てくれるんだったよねぇ??」
「え?仕事があるから無理だよ。たぶん7月」
・・・やばい。この時期は友人たちも、誰も来ない。
そして本当の最終手段、郵送してもらうことにした。
「ヨーロッパ・フランスは3日で、イタリアには5日であなたのお手元へ」
が売りの国際郵便、なんでだか知らないけど通称・EMS。
「イタリアは郵便事情が悪い、送ったはがきが1年後に着いた――
なんてのは過去の話。いまはそんなことはない。私たちは世界へ向けて・・・」
この一文を信じた。僕がバカだった・・・
何日待ってもカメラはやってこない。10日、20日、30日・・・
「あなたの郵便がどこに、いつ到着するのかすぐにお教えします」
と偉そうにホームページに書いてあるサービスセンターに電話する。
「いや・・・あなたの郵便物は税関にあるんだが、いつ届くかは・・・」
毎日電話した。完全にクレーマー。
オペレーターには、逆ギレして向こうから一方的に切るヤツや
「混み合っております」のアナウンス後、やっと繋がったと思いきや
やはり切るヤツ。ろくなヤツらがいなかった。
イヤガラセで、ワールドカップのイタリアの試合中に電話したら
案の定、ひたすら話し中だった。
きっと受話器を上げっぱなしにしているとか細工していたんだろう。
まぁ、だからこそ優勝できたんだろうね(笑)
で、それらを見守っていた僕の仕事仲間が決起する。
「もうオレは我慢できない!今からオレのローマにいる友達に電話する!!」
たしかに税関はローマにあるが、どんなんだよ(笑)
日本で言ったら、税関トラブルのため千葉にいる友人に電話するってことでしょ?
だからって(笑)
ところが、どうかなってしまった。友人に事情を話し、その友人がまた他の友人へ。
そしてその友人のガールフレンドが税関で働いていた。
しかも僕の郵便物に近い部署らしい。
そして仕事仲間は、さっそくその女の子に電話。
そして2日後・・・着いちゃった。すげぇな、この国は(笑)
ところがウキウキでカメラの箱を手にすると・・・
カメラと共に届いた1通の書類、税関手数料。
「750ユーロ」と書いてある。
う~ん、拒否しちゃおうかな☆日本に持って帰ってくれ、有り得ん。
だがこの翌日、このカメラを手にしていたら
非常に良い写真が撮れそうな仕事が1本入っている。
郵便物を持って来てくれたオッチャンに
「1時間、時間ください!1時間後までに、払うかどうするか決めます」
オッチャンもあまりの金額に「じゃ1時間後、もう1回ここに来てやるからな」
と了承してくれた。
悩む、悩む。
日本で32万円で買ってもらった。
それに750ユーロ(約10万円ちょっと)を足して・・・とか
拒否したとして日本に着くのはいつだ?
そのとき誰か友人は来るだろうか?
飛行機で持って来てもらえば、税関手数料は無料・・・
あぁ答えがみつからない・・・
そんなときに、僕の写真の師匠の顔が浮かぶ・・・
「オレがいつもカードを持ち歩いているのは、仕事中にカメラが壊れたときに
都内だったら適当なカメラ屋に入れば、だいたいそこそこのカメラは置いてある。
それをカードで買って代用するっていう保険のためでもあるんだよ」
つまり1つの仕事を完遂せせるために、そこそこ(って言ったって10万円はいく)
のカメラを買う。そこそこは、やっぱりそこそこでしかないので
おそらくその仕事のみで用済みになるだろう。
そのことがわかっていてもやっぱり買う。1度の仕事を完璧にこなす。
それが日本のカメラマン。
僕も端くれ・・・・・・
出そう!750ユーロ!!出そう、自分の誇りのために!!
実際は、腰砕け半泣きになりながら50ユーロ札を「1枚、2枚・・・」
と力なく数え、数え終えたら
もう一度最初から「1枚、2枚・・・」往生際が悪い。
ここの物価感覚で言ったら1ヶ月生きられるよ。しかも超豪遊だよ・・・
料金を払い、そしてその後
穴が開くほどイタリア郵便局のホームページを見てわかったことだが
ただいま、絶賛税関チェック強化中である。
僕は1度税関に「今あなたたちの手元にある僕のカメラは
5年前に購入したもので(ウソ)評価価値のないものです」
と書いたファックスを5月に送っている。あっさりスルー。
そして箱の中身が、まだイタリアではとても入手困難な新発売のカメラ
だいたい2800ユーロで手に入るということまでやっていたのだろう。
「750ユーロ払え」と書かれた書類には
「当税関の算定評価価格、3000ユーロ」
と書かれていた。うーん、ビンゴ・・・
でも、半年後にはまた税関は仕事をしなくなって
無料でスルーできそうな予感がする。
そしてそれがかなり現実的に有り得そうで・・・なんかくやしい。
結局僕はこの念願のカメラを手に入れるために2ヶ月以上待ち
その間、仕事仲間たちから仕事のたんびにカメラを借りまくり
そしてシチリアで購入できるそのカメラの金額より
200ユーロ余計に払って手に入れ
そしてこれを手にした翌々日、彼女がシチリアにやってきた。
最初からわかってたら、彼女に頼んでたわ!!
無駄に750ユーロを、全く仕事をしない税関にプレゼント。
ちゃんと5日後に届いてたんなら、痛いけどしょうがないから払うよ。
でも散々待たされて、その2日後に日本からの使者が・・・
良いカメラだと今実感しているだけに
2ヶ月間手に出来なかったのは本当に痛かった。
ただいま僕は、手元から離れていったユーロたちの回収作業にいそしんでいる。
もう、ここで稼いだお金はここでは使わん!
日本まで持ってって、じゃんじゃん円に洗浄してやりますよ☆