僕と一緒に、世界を回ろう。

パレルモに、こんな来方をしたくなかった・・・

僕には“パレルモのお母さん”と呼んでいる人がいる。

仕事仲間のお母さんで、週に何度も昼食や夕食を作ってもらっていた・・・

シチリアの人たちは聞く

「ヤギ、○○は食べたことはあるか？」「××は食べたことないだろう？」

「ううん、○○も××も食べたことあるよ。美味しいよね。」

「・・・でもな、俺の母ちゃんが作る○○や××のほうが美味いぜ☆」

負け惜しみのようなこの言葉を、男たちはおくびもせずに吐く。

でも、彼らの言っていることは当たっている。

たしかにシチリア料理は、どんな偉そうなレストランで食べるよりも

シチリアの家庭で作られる料理の方が美味しい。

それぞれの家庭にそれぞれの味。色々なところで食べさせてもらった。

そして、掛け値なしに“パレルモのお母さん”が作る料理が

シチリアで一番美味しかった。

いつもそれを口にできる僕は、本当にラッキーだった。

その“パレルモのお母さん”が亡くなった・・・

交通事故にまきこまれ、あっという間にいなくなってしまった。

そのためにここに来た。こんな渡航は本当に嫌だ・・・

後悔することがある。

僕が日本のことを話すたびに“パレルモのお母さん”は目を輝かせていた。

「いつか僕が東京に戻ったら、遊びに来てね」

と言うと

「何言ってるの！あなたはずっとパレルモにいるんでしょ！？

それに私はもう歳だから、旅行は・・・」

と言って、言葉を濁す。

食卓を囲むみんなで否定する。

「そんなこと言うなよー。

まだ７０歳なんだから、日本だろうがどこにだって行けるよ！！！」

こんな発言に、僕はいつも笑顔で同調していた。

“パレルモのお母さん”は、僕が東京で撮った紅葉の写真をすごく気に入っていた。

「東京の木はどうしてこんな綺麗な色になるの？素晴らしいわ！！」

「京都という所はもっと凄いよ。それに京都という街は・・・」

このとき交わした会話が頭にこびりついて離れない。

京都や鎌倉や浅草、銀座、そして僕が生まれた地元・・・

連れて行きたい所なんて吐いて捨てるほどあったのに・・・

僕が９月にパレルモを離れるとき、“パレルモのお母さん”は

「いい？あなたの家はパレルモにもあるのよ。

　何かあったらすぐに『帰って』来なさい。

いつでも私はあなたを待っているからね」

・・・もう帰るところ無くなっちゃったよ“お母さん”・・・

いまだに信じられない・・・

今にもどこかの街から小旅行を終えて

パレルモに帰ってくる気がしてならない。

いいや、パレルモに住む僕の仕事仲間のすぐ近くに、

パレルモ近郊に住む彼のお姉さんのすぐ近くにも、

それからイタリア北部に住むもう１人のお姉さんのすぐ近くにも、

そしてこれからキューバに渡る僕のすぐ近くにだってお母さんはいてくれる。

みんなの近くに“パレルモのお母さん”はいるんだと思う。

常にみんなのすぐそばに・・・

だから、僕はいつか絶対に京都の紅葉を観に行く。

Comments

[投稿情報: goto]

”パレルモのお母さん”のご冥福を……。

[投稿情報: ume10]

清●ってなに？「プロの売春婦？」何だそりゃ？？？？？？うーん意味がわからない・・・・・・

確かに彼に座ってもらったよ、やっぱスゲーよ彼、肩は良いし少年野球から一緒にやっていたからか、ウチのエースと組んでも、まるで何年もバッテリー組んでいたかのようなリード・・・・・
「キャッチャーは頭の良いやつしか出来ない」って誰かが言ってたけど、彼には最適なポジションなんだな～と感じたよ。

んでV3なんだけど、これでレッドソックス１８の言葉を借りると「自信が確信になった」が終わってみて感じるよ。

最後に、キャッチャーミットをオーダーしたよ、監督の粋な計らいで、キャッチャーやる奴の名前の頭「直、和、虎」を刺繍で入れたよ。
来秋には「虎」も見れるかな？

[投稿情報: やぎ]

＞ｇｏｔｏさん
ありがとうございます！！
明日からキューバです！！！

＞１０
え？キャッチャー清水じゃなかったの？？
誰？？？
待て、１８？？ヤツは入団したの？？
全然ニュースがなくて・・・

[投稿情報: やっこさん]

こんにちは。
本を買って読ませていただきました。
正直、イタリアへ行って野球がやりたくなってしまいました。
八木さんはこの本を見た日本人がイタリアへ行って野球をやることを薦めますか？

[投稿情報: ぴーにゃん]

テレビイタリア語６月号テキストに八木さんの本が紹介されていたので読みました。講師おすすめの本の一冊です。
笑って笑って　イタリアっていいなぁ、パレルモの人たちっていいなあとますますイタリアが好きになりました。まだ２年しかイタリア語を勉強していないけれどいつかもっと話せるようになったらパレルモに行っておいしい料理を食べてみたい！！と思いながらブログを見つけてきました。
・・・・パレルモのお母さん、亡くなられたのですか・・・・・本の中でしか知らないけれどショックでした・・
太陽みたいなマンマのやさしさに八木さんがどれだけ助けられたのか本を読むとよく伝わってきます。
おかあさんのお写真ですか？きれいな方ですね・・紅葉の時期になったら私も思い出したい。いつか、ほんとにいつかパレルモに行こうと思います・