「寿司を作る」
そんな重荷を着せられたここ数ヶ月
「僕の彼女がもうすぐしたら日本から来るから、それまで待って!」
と、往生際悪く逃げ回っていたのだけれど
彼女がシチリア到着、そして仕事の関係で予定より1週間も早く
この地を離れて行ってしまった・・・予定外。
そして彼女のいなくなった1週間で、僕は寿司パーティーという名の
ドサ周りを4回も余儀なくされた・・・
僕はここに野球をしに来たんじゃなかったけか??
実は以前ブログに書いていただいた皆さんからのアドバイスを
読み上げ、手巻き寿司のテストなんかをしたりしていた。
おかげで、酢飯はだんだん美味しくなった。
手巻きはいける!そして生じゃない魚を手巻きに使う。
だんだんレパートリーも増えてきた。
そしてさらに、こういうときは頼れる友人、料理人登場である。
彼と同居するようになってから、1日おきに昼ご飯を作りあう。
今日が彼なら、明日が僕。決めたわけではないのだけれど
なんとなくそうなった。
そして、僕が作ったパスタを彼の前に差し出す瞬間の緊張感といったら
さながら味見をしてもらう師匠と弟子の関係。
おかげで、パスタ料理のなんたるかがわかったきた今日この頃。
間違いなく、僕の料理師匠。
今この状況で彼ほど僕を救える人間はいない。
師匠から「いいか、シチリア人は生魚食えるんだよ。なんも問題ないって!!」
と勇気づく一言をもらう。
そして彼に傾向と対策を練ってもらい、包丁を研いでもらう。
研ぎ澄まされた包丁の刃先を見たとき、一瞬僕は
「あ、今の僕は何でもできる!」とタカをくくった。
祭り1発目は、野球チームの友人宅。
シーズン前半戦、仕事の関係とは言え
全く試合に顔を出さなかった我がチームの大エースだ。
おかげで前半戦、チームは負けまくり
彼が登場しだした後半戦で、追い上げをみせたものの
時すでに遅しで、今年のチーム低迷、A級戦犯の彼である。
「オレ、寿司食うんだー」と彼が余計な自慢をし回ったせいだろうか
当初の予定8人を大幅に超え、初顔の人も入れて14人になっていた。
「私はミラノで寿司食べたことあるんだ☆」
という女性も中にいた。寿司経験者がいるのは心強い。
料理に取り掛かる。
「用意してもらう魚は300グラムずつで良い」
と言っておいたにも関わらず、なぜか鮭1匹まるまるいたり
まぐろがでろんと5キロもあったり、彼らのテンションの高さが伺える。
というか、あまりに寿司祭りを楽しみにしていてくれたのだろうか
「当日に魚屋から買って来い」と言っておいたにも関わらず
2日前に買って準備してやがった・・・最悪。
まぐろ、5キロのうち寿司として使えそうな部分、300グラムぐらい。
「ちょうどいいか」と思い、ばんばん切り落とす。
意気揚々と「俺が買ってきたんだぜぇ☆」と自慢していた1人の顔色が変わる。
「え?こっちは寿司にしないの??」
「う~ん・・・ちょっと焼いて寿司にするよ」
「え??焼いたら寿司じゃないじゃん!!」
「大丈夫大丈夫、寿司にできるから」
「・・・・・・」
ヤツの気持ちは痛いほどわかる。
シチリア人のほとんどは、刺身のことを寿司だと思っている人ばかりだ。
「生で魚を食べる=寿司」
生で食べるんだから料理する時間なんて必要ないだろ??
と言いたげに「20時に家に来い」と言われ、
「準備が必要だから18時には行きたい」と言った僕の発言を
誰も理解できなかった。
とにかく酢飯を作り、魚を準備し、手巻き寿司の準備を進める。
みんなが「こんなに準備が必要なのかー」と呑気に言い出す。
解かったか、僕が逃げ回っていた理由が。
21時から始める予定が、19時には全員集まってしまった。
手巻き寿司は食べ始めても大丈夫だなと判断し
やり方を説明する。
全員が興味津々で、僕の手元を注目する。
「ヤギ、これが寿司なんだな?これが寿司なんだよな!?」
えーっと、手巻きを寿司は・・・まぁ酢の飯だし・・・
「そうそう!」責任逃れの一言。
そして次々と手巻きをみんなが巻き始める
そして口に・・・
我がチームの大エースがトイレに走って行った・・・やりやがった・・・
そして1分後、僕のところにきて
「・・・いや、ヤギ・・・寿司は美味しかったんだけど
作った手巻き寿司のサイズがちょっと大きすぎて・・・」
その光景を見ていた数人が、連鎖反応でトイレやゴミ箱に行って
手巻き寿司をもどす。
「いや~やっぱ生魚は・・・このツナいってみよう!」
と再チャレンジする。ツナマヨネーズ好評。
というか、ツナマヨしか食べない・・・無残に散ったサーモン1匹・・・
気を取り直してメインイベント。
まぐろの寿司を握り、何貫かお皿の上に並べる。
普通のまぐろ寿司、づけ、塩を軽く振ったもの、
オリーブオイルと塩で漬けたもの・・・誰一人として手をつけない。
そして「ミラノで寿司を食べた」という女性が僕にとどめを刺した。
「手で握るのね・・・」
だから何度も言ってるだろう!
僕がまず手で握ってみせるからそれが嫌だったら
自分で握って食べてって、握り方教えるって何回言ったんだよ・・・
のりが食べられない、生魚がダメまでは許そう
「酢飯がなんとなく・・・」う~ん、成す術なし!!
結局、近所に売っていた出来合いのチキンやら
シチリア料理やらをみんなでほおばった。
「あぁ・・・オレは良くやった!自分で食べても美味かった!!」
そう言い聞かせるが、なんだこの敗北感は??
やる気なくチキンをほおばる、味がしない・・・
というかこの油だらけでしょっぱいチキンやらポテトフライやらが憎い。
すると突然
「ヤギ!これすごい美味しい!!もっと作って!!!」
と、誰もいないなくなったはずの寿司コーナーから声が飛ぶ。
そこには1人のチビッコが!!!!
野球どころか、今回の寿司祭りのA級戦犯野郎の娘である。
づけをばくばく食べている。最初は僕を同情して言ったのだろうと思った。
しかし彼女の食べっぷりはハンパじゃない、ホンキで欲している!!!
キミは天使だ☆
そうかあ、惨敗だったか……。でも、天使が現れてよかったね。5年後か10年後、彼女を基点に、寿司に理解を示すパレルモっ子が増えていることを想像すると楽しいよね。野球、寿司……。トラゾーが撒いた種が実りますように。
投稿情報: goto | 2006年8 月 3日 (木) 19:05
やっぱりダメでしたか、寿司。
サラダ巻きみたいなチープなのはいけるのかしら。
天使の顔は本気で寿司を欲してる顔だー。
投稿情報: ポポ | 2006年8 月 4日 (金) 00:28
くそったれどもめー!!
鮭といえば、うちのマミーがむかしよく作ってたのはね、焼き鮭をほぐして、ゴマと小松菜の漬け物とレモンのちいさな薄切りと酢飯をさくさく混ぜたもの。ライスサラダみたいで外国のひとにも好評だったような。。。皮付きのちいさなレモン(けっこういっぱい)がポイントです。
って、もうチャレンジしないか(イタリア人たちが)。
投稿情報: chihirock | 2006年8 月 4日 (金) 02:15
>gotoさん
いや、10年後みんな普通に食べてますよ、きっと。
コーラを始めて飲んだ人たちってこんな感じ
だったんじゃないでしょうか?(笑)
>ポポさん
そう!サラダ巻きみたいなチープなのしか
いけないんですよ!鮭美味かったのになぁ。
結局、天使と僕しか食べませんでした。
1匹まるまるいたのに(笑)
>チヒロック
こいつら酢飯嫌い・・・もう寿司じゃないわ(笑)
ちなみに美味い美味い言って食いまくってた天使は
「それ以上食べちゃダメ!」って
お母さんに止められてた(力なく苦笑)
投稿情報: やぎ | 2006年8 月 4日 (金) 06:14