僕が所属しているチーム『カウナス・リトアニカ』は外国人選手に対して
VIP待遇とも言える環境を与えてくれている。
しかしね、待遇が良ければ良いほど、プレッシャーというか
なんか見えない力が僕の肩の上にずっしりと・・・
現在『助っ人』という言葉の重さを、本当に嫌になるくらい感じておりますわ。
外国人選手は現在僕とアメリカ人選手1人の、計2人。
(数日後に、もう1人のアメリカ人選手が合流予定)
待遇内容をざっと言うなら
チームは僕にアパートの一室をあてがってくれ
料金の半額近くを向こうが支払ってくれている。
それと車ももらった。
日本製の車で、けっこうぼろぼろなのだが
そこはやっぱりMADE IN JAPANで、走行にはまったくの問題はない。
使用するにあたって保険代や修理代が必要だったのだが
僕が払ったのはこの料金だけだった。
そしてとどめ、バスケの試合観戦!!
しかも普通の試合ではなく
リトアニア内では超メジャースポーツであるバスケのプロリーグの試合で
しかもプロ野球で言うところの日本シリーズにあたる最終決戦の
(バスケだと何て言うの?)
超重要な試合観戦に連れて行かされた。
当然この試合のチケットはプレミアで、中々手に入らないらしいのだが
バスケ好きのアメリカ人選手が「バスケの試合を生観戦したいんだけど」
という何気ない一言で、なぜか僕の席までが用意されてしまった・・・すげぇな。
チームメイト数人も僕らに便乗して『付き添い』と名乗って入場した。
この試合がどういうものかをリアルに知っている彼らは
もう会場入りする前から大興奮で、僕ら以上に喜んでいた。
カウナス対ヴィルニウス!!
この2チームが毎年プレーオフまで進んで、ほぼ毎回頂上決戦をしているそうだ。
僕らが観戦した試合は、両チーム2勝2敗でむかえたプレーオフ第5戦。
先に4勝したチームがチャンピオンに決定するので
この第5戦を勝ったチームが断然有利になる。
会場は暖房施設もなく、だだっ広い印象なのだが
それらを埋め尽くす完全に飽和状態な観客数たちが放つ
ものすごい熱気によって、Tシャツ1枚でも暑く感じるほどだ。
ちなみに会場外の気温はだいたい10℃前後で、まだまだ肌寒さを感じる。
試合開始。
ヨーロッパ各地で見られるサッカーの熱狂的なサポーターに似て
大声、旗、手拍子で選手たちを盛り上げる。
ただサッカーサポーターと違う点は、危険な匂いを感じないことだ。
健全な、明るさを感じる。
間違いなく、応援しながらマ●ファナだとかコカ●ンはやってないだろうな(笑)
試合は開始当初からカウナスリードのまま進んでいく。
カウナスがホームの試合なので
当然カウナスサポーターが9割以上を占めている観客席は
否応なしに、ものすごい盛り上がりをみせている。
そしてさらに、試合を止めて作戦タイム(何ていうの?)のために
選手たちが各々のベンチに待機している間
チアガールが出てきて、色々なダンスを披露するのだが
観客たちは、試合同様にものすごい大きな手拍子で、チアガールたちを盛り上げる。
チアガールたちは、出てくるたびに色々なダンスを披露するのだが
どうやらいつも、踊るダンスの順番が決まっているらしく
バスケ狂の、僕のチームメイト数人は
「ヤギ、次のダンスはシャッターチャンスだぞ!!撮ったら俺にその写真くれ!!」
「え~?この後の、もう1つ後のダンスのほうが俺は好きなんだよなぁ~。
あ、俺もその写真くれ!」
などと言い合っている。どこの世界も男の美意識は一緒だ(笑)
試合が終わりかけたころ、ヴィルニウスがものすごい追い上げを見せ
「カウナス、逆転されるかも!?」という試合展開に
もう会場は大スイングで、ドッカンドッカン沸いた。
なんか格闘技の試合を見てる感覚に近いなー。
ただ試合中、どうしても忘れられない光景が1つあった。
観客の熱狂が最高レベルに達したとき
敵であるヴィルニウスの監督が、審判のジャッジに抗議する意味合いで
コートに落ちていた紙テープを、観客席に向かって投げた。
その瞬間、四方八方の観客何千人?何万人?がいっせいに彼に向かって中指を立てた。
リトアニア人の腕は皆太い。常識を超えてぶっとい。
それから手は分厚い。なんかもう、形容できないくらいにすごい。
そんなものを所有する彼らが「ビシッツ!!」と天に向かって、まっすぐに両手をかかげ
「ビンッッ!!!」と中指を突き上げている。
笑えない光景だった。こえ~ぇ・・・
一瞬の出来事で、写真を撮る余裕がなかったのだが
次回バスケに行ったら、彼らの中指風景をぜひ撮ってみよう。
まじ、ゾッとしますよ。
結局ヴィルニウスの追い上げを振り切ったカウナスが勝利を収め
会場全体がハッピーな空気に包まれた。
もしこれがイタリアのサッカー会場だったら
この雰囲気のまま帰り道で肩を組みながら歌ってるヤツらとか
車から箱乗りしながら旗を振ってるヤツらがいて
警備中の警察官も「まぁ仕方ねぇや。イタリア勝ったし」なんて感じの光景を
目の当たりにするのが普通なのだが
リトアニアはちょっと違って
会場内の大歓声とは正反対に
会場を出ると、もう熱気は収まり
皆自分の車に乗り込んで、そのまま帰ってしまう。
バスケ場付近は車で渋滞しているものの
狂ったとしか思えないクラクションの鳴らし合いもなければ
ボンネットの上でダンスするようなヤツらもいない。
静かだ・・・
会場内の健全な騒ぎっぷり、あの中指の迫力、帰宅時の穏やかさ
全てにギャップを感じた。どれが本物のリトアニア??
いや、全部足してリトアニア!!
(ちなみに第6戦でも勝ったカウナスは、今シーズンのチャンピオンになりました)