現在リトアニア野球は、リーグ戦終盤をむかえ
全4チームが優勝する可能性がバリバリにあるという状態で
これから9月の終わりまで、大激戦が続く。
土曜、日曜の2日間で3連戦。
土曜日に行った2試合はいずれも僕らのチームが勝利した。
投、打、守と全ての調子が良かった。
こういうときのチームはどんな相手にも負ける気がしない。
2つのホームランも飛び出し、完璧な勝利だった。
この2連勝で、僕らのチームは単独首位におどり出た。
そして日曜日。
ここでもう1つ勝っておくと
その後のリーグ戦が一気に楽になる。
おのずとチーム内に気合が入る。
両チームともエースピッチャー、そしてそれに次ぐピッチャーを
昨日使い果たしてしまっているので3番手のピッチャーが先発。
やはりスピードやコントロールが昨日のピッチャーたちに比べると劣る。
しかも昨日はおとなしかった相手チームの攻撃が
ようやくリズムに乗りはじめたのか
毎回ヒット、フォアボールなどで塁上にランナーがたまりまくる。
1点、2点と得点を与えてしまう。
「今日は乱打戦になるな・・・」
相手の猛攻を受けながら、そんなことを僕は思った。
そして僕以外のチームメイトもそう思っていたと思う。
しかしここで僕らは信じられない野球に遭遇した・・・
前日に2試合こなしたことで、皆身体は重かったけれど
まぁそれは相手チームも同じことで、大して気になることでもなかった。
案の定、僕らの打つボールはポンポンと外野へ飛び
それが、たまたま野手の真正面に飛び
相手の外野手たちは数メートルも移動することなく
グローブの中にボールを収めていった。
「ま、今の時点では不運が続いているけど
回が進めば、いずれ・・・」
そんなリラックスした雰囲気で試合は進んだ。
しかしいつになっても点差は縮まらない
後半をむかえ、焦りだした僕らは
短打狙いに作戦を切り替え
なんとか塁上にランナーをためることに成功する。
ところがこういうときに限って
芯でとらえた打球が野手の真正面をつく。
内野手は難なくそれを捕って
飛び出してしまったランナーをあっさりとホースアウトにする・・・
7回だったか、ノーアウト・ランナー1,2塁という絶好の場面で
またもや痛烈に放たれた打球は、セカンドの正面にライナーとなって
一瞬飛び出してしまったランナー2人を
一気にホースアウトされ、なんとトリプルプレーを喰らってしまった・・・
この時点でチーム内は「今日は何か・・・何をやってもダメな気がする・・・」と
焦りから、困惑に変わってしまった。
そしてどうにもその雰囲気を替えることのできないまま試合終了。
なんと9つの攻撃中、5つのダブルプレーと1つのトリプルプレー
を喰らってしまっていた。
なんだこの野球は!!!
たしか得点で言うと、2-7かなんかで負けた気がするのだが
負けた気が全くしない!!
こんな経験初めてだ。負けて悔しいとか
勝ちに貢献できなかった自分が腹立たしいとか
そんな感情が一切沸いてこない。
ただ、頭の片隅がもやもやする感じで、それがすごく気持ち悪い・・・
そんな週末の遠征も終わり、地元・カウナスへ戻る。
途中いつも立ち寄るレストランでビールを飲みながら食事した。
みんなで酒でも飲もうということになり
テーブルにウォッカがやってきた。
「ヤギ!リトアニアン・ウォッカとサケ(日本酒)はどっちが好きだ!?」
「ウォッカ!!!」
「あっはっは!そうか、飲め飲め!!!」
ヤケ酒パーティーのはじまりである。
運転手を除いた全員でウォッカを回し飲みする。
元々酒飲みなリトアニア人たち、
しかも彼らはスポーツ選手ということもあってか、飲む量もハンパない。
9選手、1監督、2ガールフレンドで
ウォッカのボトルを5本、ビールを20本空けた。
飲み方は、小さなグラスに注がれた100mlほどのウォッカを一気飲みし
そしてそのあとチェィサーとしてオレンジジュースを100mlほど
口に流し込むリトアニア流。
これを、座席の右から左へとボトルを動かしみんなで回し飲みする。
最初の1ボトル目のリトアニアン・ウォッカは美味かった。
赤い色のウォッカで、クランベリーの香りが漂い
少し甘みもあって飲みやすい。一気に飲んでも、のどごしが良い。
ちなみにアルコール度数は40度。
しかし2ボトル目、3ボトル目あたりから、味がわからなくなり
一気に酔いはじめる。そして4ボトル目、だんだん辞退者が増え
ウォッカ用のグラスも止まる。こうなると標的は外国人コンビだ・・・
「おいヤギ!ほら飲めよ、美味しいぞ!!これがリトアニアの香りだ!!!」
「アメリカ人のオマエはリトアニア・ウォッカが嫌いなのか??
そんなことないよなぁ~」
そんなこと言われたアメリカ人選手は、もはやすでに潰されている
2人とも、礼儀程度にグラスに口をつけてギブアップのサインを出す・・・
飲みはじめてから1時間ちょっとで、ものすごい量の酒を飲んだ。
もはや致死量と言える・・・
しばらくしたら、レストレンに客が押し寄せてきたので
みんなで席を立つ。
「おぉなんとか終わったか・・・。さて家に帰って寝るか・・・」
そんなことを思いながら車に乗り込む。
車はレストランを出て、高速道路に乗り込んですぐに
ガソリンスタンドによって給油。地元まではあと1時間くらいか。
ここでチームメイトの1人が、懲りずにまたもやウォッカを2本購入・・・
だいたいガソリンスタンドに酒を売ってるのって
おかしいだろリトアニア!!!
それから帰るまでの1時間、このウォッカを車3台で回し飲みした。
時速100キロは軽く出ている中
車と車の間を30センチくらいの幅に寄せ合い
ウォッカを手渡しする。運転手を除いた全員が回し飲みすると
ボトルはまた別の車へ渡って行った・・・
地元にたどり着くまで、みんなは時折大空に向かって奇声を発したり
なぜか僕はロシア語のエロい替え歌を歌わされたり
併走しながら、同乗者全員で謎の祈りをささげあったり・・・
リトアニアの男たちは普段、すごく物静かで紳士的だ。
そんな彼らの壊れっぷりは、度を越している。
そしてあんなに振り切った男たちの輪に入っていたら
「まぁ今日の負けは、また今度取り戻せばいいか」
という風に割り切れてしまった。普段はとことん割り切りの悪い僕が。
やるなリトアニア男☆
・・・という夢を見たということにしておいて欲しいwww
まさか、あのおとなしいリトアニア男たちが
そんな暴走族みたいな真似するわけないじゃないですかー(棒読み)