おそらく、世界で一番野球に対して熱狂的な街はサンタクララだろう。
街中で一体何人の子供たちが野球をやっているのだろうと思えるほど
道端のどこででも野球をやってる。
そして必ず4,5人の大人がそれをぼんやりと観戦していたりする。
これがサンタクララの日常的光景。
そして、例えばその少年たちが道端で野球をやろうとしたとして
路上駐車している車が邪魔だったとする。
すると、少年たちはその持ち主を探出して
持ち主に「今から野球やるから、ちょっと車をずらして」と頼む。
そして持ち主は、それが当たり前のことかのように、少年たちの言葉に従う。
そして車を移動するついでに彼らのプレーっぷりを観戦していたりする・・・
夢の世界??(笑)
そしてこの街には、世界一の幸せ者たちがいる。
9歳、10歳の少年野球チームの選手たちだ。
彼らは専用の野球場を持っている。
ある日、その球場の壁に『明日、練習試合。14:00開始』
と書かれた紙キレが1枚貼られてあった。
翌日、球場は人で溢れた。
だいたいいつも試合になると、公式戦・練習試合関係なく
500人くらい観客が集まるそうだ。
平日の14:00、
この小さな街の大人のほとんどがここにいるんじゃないかと思える賑わいぶりだ。
そして入場料1人4円。でっかいコッペパンが買える。
“神様・パレッ”たちの試合の観戦料金も4円。
球場は内野付近に入りきれなかった観客たちが
外野の芝生付近を陣取り、球場全体を囲む。
人で溢れた少年用の小さな球場が、さらに小さく見えてくる。
試合が始まる。
地元のサンタクララ 対 隣り街の少年チーム。
基本的には地元チームびいきの観客たちだが
一生懸命なプレーには敵味方関係なく、惜しみない拍手が送られる。
ヒットを打ったとき以上に、送りバントをしっかりと決めた少年に拍手が集まり
1塁ベースまで一生懸命駆け抜け、アウトになったた少年に大歓声が飛ぶ。
そして、手を抜いたプレーには500人全員が本気で怒る。
球場を囲む観客全員で、球場内のたった1人の野球少年に向かって
「違うよ!今の捕り方はこうだよ!!そしてエラーしたそのあとが大事なんだよ!!
一生懸命ボールを追いかけなきゃダメだよ!!!」と少年にアドバイスする。
1塁けん制でアウトになった少年が、ジャッジに納得いかなかったようで
かぶっていたヘルメットをベンチに投げつけた。
それを見ていた監督が烈火のごとく怒り
ゲームを止めて、少年にヘルメットをきちんと
ベンチ前の用具置き場に置くように指示した。
少年は泣き出し、それでもヘルメットを拾い上げてきちんと置いた。
球場は温かい拍手で包まれた。
彼らのレベルは、正直高くないと思う。
多摩川あたりでプレーしている同年代の少年たちの方が圧倒的に上手い。
でも彼らはこの専用球場で、徹底的にホンモノの野球を叩き込まれる。
技術以前に、気持ちが大事なんだよとサンタクララの大人たちは教える。
そうだった、これこそがキューバ野球。
あぁ、だから“パレッ”がこの土地から生まれたんだなあ。
彼もこの球場の卒業生だ。納得☆