(3月の頭に書いたものです。
パソコンがぶっ壊れてアップし忘れていました)
雪が降る日は暖かい。
空を覆う雲が空気を閉じ込めているからだろうか?
空気がシンと止まっているような感じだ。
そして街行く人たちの数が、快晴の日よりも心なしか多い。
雪が降る日は人通りが多いなんて、僕が知っている国では有り得なかったことだ。
そして降り積もった雪は、塩とか砂糖を街中に散りばめたような
そんな小さく細かいもので
そして時折吹く風が、降り積もったその雪たちを空中に舞い上がらせ
キラキラと発光させる。雪が宝石のようにキラキラと光るなんて
今まで観たことがなかった。本当にキレイだった。
そんな雪体験をした日に、僕は初めて彼らと野球をした。
数日前に会っていた監督と僕の住む宿の前で待ち合わせて
彼の車で体育館に向かった。
雪で全てが包まれた大きな体育館には、少し小さめのトラックが描かれ
陸上選手たちがトレーニングしていた。
体育館内は暑さを感じるほどに暖房が効きわたり
選手たちが発する湯気で体育館中のガラスが曇っている。
そこの一角をネットで覆って
野球選手たちがキャッチボールやバッティング練習をしていた。
僕は監督と一緒に彼らの元に歩み寄った。
彼らに一歩一歩近づくたびに、僕の心臓が「ドクッ、ドクッ」と緊張する。
監督は練習をいったん止めて、選手たちを呼び寄せ
僕を紹介した。
おそらくもうみんな僕が来ることは知っていたのだろう。
笑顔と緊張感が入り混じったそんな表情を、選手たちはしている。
「マローノ! マヌ ヴェルダス ヤギ。
アシィ ノリュ ジェスティ ベースボール ステゥビエン!!」
(はじめまして!僕の名前はヤギです。僕はあなたと一緒に野球がやりたい!!)
と、昨晩一生懸命覚えたインチキ・リトアニア語を使ってみる。
一応なんとか通じたようで「おぉ~!」と、選手たちから優しい拍手が起こる。
この拍手に僕は心からホッとし、少し緊張も和らいだ。
そして彼らの輪に入って一通り練習をこなす。
周囲の選手たちが、みんなチラチラと横目で僕の動向に注目している。
キャッチボール、トスバッティング、投球練習のキャッチング・・・
皆、物を品定めするような視線で僕を見ている。
途端に、いままで僕にまとわりついていた“お客さんムード”な緊張感は消え
なんというか、僕の気持ちが戦闘モードに入る。
ここで舐められるわけにはいかない。
そうだ、僕は今この瞬間からこのチームの一員になったのだ。
彼らの視線は、僕のことをライバルだと考えている証拠だ。
もうポジション争いは始まっている。
とりあえず今は9分の1、レギュラー獲得を目指そう。
僕の新しい野球が始まった。
コメント