サンタクララに着くなり、知り合いに「野球が観たい」とせがんだ。
キューバ人、その一言に大喜びで
「さすがおまえは日本人だ!!
今まで何人もイタリアからウチに遊びに来てるけど
皆、ディスコに連れて行けだの
パブで女の子と知り合いたいだの、ろくなこと言やしねぇ!
よーし!ちょうどこれから試合があるから、今から連れて行ってやる!!」
と、車を飛ばし始めた。
着いたスタジアムは、ハバナほど大きくはないが
このスタジアムも重厚感たっぷりで
威圧的な感じが、ヨーロッパ建築の教会とか古いホテルなどのそれと似ている。
さっそく球場へ・・・関係者入り口を通過する。
「オレは、今日これから試合をするサンタクララのチームの
女子ソフトボールの監督なんだよ」
座席も関係者席だった。
最前列を占拠していた『選手たちの妻&彼女』軍団がジロジロとこちらを伺う。
そのジロジロっぷりは、もはや試合どころではない。試合に集中しろ、彼女軍団!
しかしこの中に“神様・パレッ”の奥さんとかがいたりするのかと考えると
少しドキドキする。
神様はこの試合3打数1安打、2四死球。動きがあまり良くなかったが
神様のそんなところが見られることすらも至福だ☆
“神様・パレッ”実は7,8年前にアメリカから
メジャーリーグ入りの誘いの電話を受けたことがあるそうだ。
結局このことがキューバ政府にバレて、1年間の試合出場停止を受け
そして“神様”は今もここキューバでプレイしている。
ざまあみろアメリカ人!彼のプレーが見たけりゃキューバまで来い!!
そんなセリフを吐きたくなる夢心地の心境☆
試合は“神様”の所属チーム『ヴィヤ・クララ』の負けでゲーム終了。
球場を出る。
するとすぐに僕の知り合いに話しかけてくる巨漢の男がいた。
知り合いは巨漢と一通り会話を終えた後、僕のことを紹介した。
「コイツは日本人で、イタリアで野球やってるんだよ」
「オォ、ニッポンジン!! ワタシハ“ラゾ”トモウシマス!!
ワタシハ アナタノ カレシニナリタイ デス!! ガハハハ☆」
キューバ代表のピッチャー“ラゾ”だ!!すげぇ!!!
キューバに来て20日近く、初めて聞いた日本語が
よりにもよってラゾの「アナタノ カレシニ」だ☆
感動いっぱい胸いっぱいも束の間、アンダーシャツにユニフォーム下状態で
明らかに「今試合を終えてきました」という感じの
170センチほどの選手が、僕の目の前を通過する。
『まさか、この背丈・・・』
その170センチの選手は、“ラゾ”と冗談を言い合った後
僕の知り合いと何やら会話、そして先ほどのように
僕のことを170センチに紹介。
すると170センチは
「日本から来たのか!遠かっただろ!?ミズノは最高だ☆」
と、僕と握手しながら笑っている。
僕は『あなたの名前が知りたいんですけど・・・』
と聞いてみたい気持ちでいっぱいだったのだが
そんな失礼なことできない。
だってこの人、絶対に“神様・パレッ”なんだもの・・・
彼の差し出した、大きくてガッシリして暖かい右腕を
僕は両方の手で「ガッ」と、大事に大事に握った。
プロレスオタクならわかるであろう“あの光景”である(笑)
犬が、飼い主なんかに腹ばいになってお腹を広げて見せる、あの状況とも訳せる。
神様が僕に問いかけてくる「オマエ、グローブはどこ使ってんの??」
「ミズノ・・・です」ウソである。
「おぅ、そうかそうか!明日も試合観に来る??」
「はい!」
「あ、オレこれから球場に戻らなきゃいけないから、じゃあな!!」
と言って、170センチは球場に消えて行った。
わずか1,2分のことだっただろうか?
知り合いに聞く「ねぇ、今の“パレッ”だよね??」
「おう、そうだよ!
今日これからオレの家で、オマエと“パレッ”とオレの家族とで
夕飯を食う予定だったんだけど、でも今日試合で負けちゃっただろう。
だから今日これから彼はミーティングがあって
明日の試合は昼間からだから、もう今日は外出できなくなっちゃったんだよ。
あぁ、アイツはキューバ代表の選手でな・・・」
いや、僕には説明不要です。
“神様”の試合観戦後、“神様”と食事会・・・
豪華すぎて、きっと食事がノドを通らなかったでしょう。
サンタクララに来た一番の理由を、僕は知り合いに熱く熱く話す。
「そうなのか!!だったら今日がダメでも
明日とかに食事会セッティングしてやろうか!?
・・・あ、でも、明日は試合終わったら、すぐに遠征に出るんじゃないかなぁ??」
いえ、けっこうです。
“そんな可能性があった”という事実だけで、もう充分でございます。
サンタクララ初日のベッドの中で
「今日、これまで僕に起こったこと全てが実は夢で・・・」
なんて乙女みたいなことを、ホンキで思った。
あぁ、今の僕ならサンタクロースの存在も信じられるよ(笑)
よくここまで奇跡が続くもんだ。
キューバ代表との連続出会い!
すげえな。
サッカーのイタリア、もしくはブラジル代表選手と、
ピッチレベルで軽口を叩くという感じだもんね。
「アナタノカレシニ…」。
ラゾ、絶対日本で使ったな。
投稿情報: たかし | 2007年2 月13日 (火) 11:01