早朝から仕事だった。結婚式の写真撮影。
仕事仲間のカメラマン、ビデオカメラマン、アシスタント、そして僕の4人で行動した。
「ヤギ・・・オレ風邪ひいた・・・」と開口一番言ってきた。
顔色を見るだけで病人とわかる感じだ。
現場に着くまでは本当に辛そうだったが
いざ仕事になると、そんな素振りも見せず快調に仕事は進み
僕達も彼の風邪のことを忘れる。
新郎の家、新婦の家、教会、海岸で撮影
そこでビデオカメラマンの彼は給仕長に
「体調が悪くて風邪をひいてるみたいなので
軽い食事を用意してもらえますか?」と話かける。
やはり相当体調が悪いみたいだ。
給仕長も快く返事をして数分後、素パスタ(ペンナ)が彼のお皿にのせられた。
さらにはオリーブオイル、チーズが彼の手元に置かれる。
彼はおもむろにパスタにオリーブオイルをだくだくとかけ
チーズをこれでもかとのせて、何食わぬ顔で食べている。
「やっぱ全然食欲が出なくって・・・」と僕を見ながら言っているが・・・
おいおい食欲なくてそれかよ!
色々と事情を聞いて判明したのだがイタリアの人は風邪をひいたときに
「素パスタ」を主に食べるらしい。
どうやら、ただ茹でただけのパスタを「塩抜き」で食べるというのが重要らしい。
さらには「パスタの中でもペンネがベターだ」
「うん、ペンネだな」とか不思議な会話が続く・・・
塩がかかってない分の味付けを「オリーブオイル」
「パルミジャーノチーズ」でするんだが
当然だくだく、こんもりになるのは当たり前・・・
しかし「塩抜き」なので、彼らの中では重くないという認識らしい・・・
そして日本では米だけのリゾットを、もっとスープみたいにして食べると説明すると
「う~え~米は重いよー。風邪ひいてるときに・・・ でもイタリアでも食べるよそれ。
オレの母ちゃんは、風邪ひくといつもそれ食べてるよ
でもオレは絶対にイヤ!!」「オレも」「オレも」と
僕のテーブルを囲んでいるイタリア人3人が満場一致で米を否定。
ほどなくして、僕ら健康体には海産物を細かくしたリゾットとラビオリが配られた。
まあラビオリは普通だったんだが、リゾットのほうは米の主張の全く無い
さらさらしていて、何やら身体には良さそうだ。
僕が海鮮リゾットを意気揚々と作ったらこうなりそうだ。
ビデオカメラマンは「う~、リゾット見たくねぇ~・・・」と
僕らの目の前に置かれたお皿を見て不快な顔を向ける。
僕からしたら、あんたの目の前にあるその謎の食べ物のほうこそ
目をそむけたいんですけど(笑)
例えば10年とかここに住んだとして、僕が風邪をひいたら
「素パスタ」をオーダーする日が訪れたりするんだろうか??
絶対に有り得ないな(笑)