まぁどこの国も日本なんかとは違うから
そう簡単に野球用品なんかは手に入らないわけで・・・
スパイクのポイントを留めるネジが取れていた。
たった1度だけ練習時に使ったのだが
ネジの締め方が悪かったようで
1つだけこぼれ落ちてしまった。
たかだかネジ1つなのだけれど、これを無視して履き続けていると
やがてネジが埋まるはずだった溝に土が侵入し
あっさりとスパイクが壊れることになるので
無闇に履くわけにもいかず
予備用に持ってきてあった古いスパイクを使い続けていた。
しかしあくまで予備用のスパイクはポイントが擦り切れてしまって
うまく地面を噛んでくれない。
何度かこのおかげでプレー中に足元が滑って、転んでしまうこともあった。
そんなある日、街の郊外を車で走っていると
道沿いに大型日曜大工用品店を見つけた。
早速入店して、ネジ売り場に行くと
ものすごい種類のネジが置いてあった。
「ここならなんとかなるかも・・・」
そう思って、急いで自宅にスパイクを取りに戻り
再びネジ売り場に向かった。
そしておもむろにネジ売り場でスパイクを取り出し
「この部分に合うネジを探しているんですが・・・」
と定員に聞く。相手はおそらく初めて鉄製のスパイクを見て
一瞬ギクッとしていたが、思い直して対応してくれた。
そして、たくさんのネジをスパイクに挿して試してみたが
なかなかぴたりとはまるものがみつからない。
「これ日本製?日本のネジは小さいからなぁ・・・」
と、京浜工業地帯のおっさんたちにとっての最大の褒め言葉を
ここリトアニアのネジ売り場の店員から聞けたのだが
ちっとも喜べない。
店員と一緒に、やっきになってスパイクに合うネジを探した。
穴にはまるものもいくつかあったのだが
ネジ自体が長すぎて、しっかりと締めようものなら
地足のところまで突き抜けてしまう。
結局お店にあるネジではどうにもならないことがわかった。
店員はがっくりと肩を落としている僕に同情したのか
「もしオマエが欲しいネジが入ってきたら、連絡してやるから」
と、ケイタイ番号を聞いてきた。
そんなことがあったことを完全に忘れきっていた3ヵ月後のある日
ケイタイが鳴った。
「俺は○○(店の名前)だ。ネジがある。○○だ。ネジがある・・・」
電話に出るなりカタコトの英語を言われ、一瞬たじろいだが
何度も店名とネジという言葉を繰り返されて、僕の脳が反応した。
リトアニアで生活している僕は、こんな連想ゲームのようなことは
日常茶飯事なので、明らかに勘が鋭くなっている。
何度も店名とネジというキーワードを聞いているうちに
日曜大工店での出来事を思い出し
「ああっ!!!」
と言うと、受話器の向こうの店員は安心したようで、また一言
「ネジがある」
僕はスパイクを持って店に行った。
ネジ売り場に顔を出すと、3ヶ月前に対応してくれた店員がいた。
彼に向かっていく途中、彼も僕を見てすぐわかったようで
僕に向かって小さく手を振ってくれた。
僕が彼に近づくと、彼はレジ下からネジを取り出し
スパイクに差し込んでみた。太さ、長さも完璧だった。
必要以上の笑顔で何度も「ありがとう」を連発する僕。
あまり普段は表情を顔に出さなそうな彼は、それでも
1つ仕事を終えた満足感からか
僕に向かってぎこちない笑顔で親指を「グッ!」とやってきた。
2人の周囲が、なんとも言えないシアワセな空間に包まれた。
そして料金を支払う。
20個入りで50円だった。
これぞプロフェッショナル。
投稿情報: mniz | 2007年8 月17日 (金) 00:12
>mniz様
ホントですね。
ネジ売り場のおっちゃんよく覚えてたよなぁ。
感謝です!
投稿情報: やぎ | 2007年8 月17日 (金) 23:09
おもじろい〜〜〜〜
ねじがある〜〜〜〜
ぐっ!!
投稿情報: UNIKO | 2007年8 月18日 (土) 12:24
リトアニアンっていい人多いね~
それも50円のために電話までしてきてくれるなんて、カンドー!
思わず今からリトアニアへ行ってそのネジ屋の店員に「アンタはエライッ!」と言って肩をポンポンとだけしてみたくなった♪
投稿情報: ちーちゃん | 2007年8 月20日 (月) 13:03
>UNIKO
もうスリラン??行ってらっしゃい☆
>ちーちゃん
いい人多いよー。
普段は無口で静かな人が多いけどね。
ちーちゃん、来年あたりどうっすか??
投稿情報: やぎ | 2007年8 月23日 (木) 06:51