サンティアゴの街をぶらついた。
キューバの第二都市だけあって、さすがに大きな街だ。
港街だからだろうか、街並み、人の感じが
どことなくパレルモと似ている気がする。
そして、少しビックリしたのがキューバのどこでも観られる
“道端で草野球”という光景が他の街と比べて少なく感じた。
街に坂が多いというのもあるかもしれないが
野球が盛んという前情報があっただけに、少し肩透かしだった。
なので、野球観戦のほうも正直期待していなかった。
『ガラガラの観客席で黙々とプレーし続ける選手たち・・・』
そんな想像が簡単にできた。
球場にサンティアゴの女子ソフトの監督と一緒に入る。
なんとこの人、女子ソフトの監督をやりながら
男子野球のバッテリーコーチも務めているらしい。
彼に連れ立って、試合前のグラウンドに入ったり
ブルペンに入れてもらったり、すごい体験をさせてもらった。
そして試合観戦は球審の真後ろの超VIP席に通される。
隣りにはなんと、キューバ代表監督が座っていた。
WBCで王監督と握手したりしている人だ。
この人、イタリア野球の相当なポストにも就いているらしく
毎年何度もイタリアに行っているそうで
言葉もすごく流暢だった。
「シチリアかぁー。パテルノの球場はキレイだよな!」
「はい!僕もあそこはすごく好きです!!」
などと、おもいっきりローカル話題を振られ
緊張気味に会話した。
現在も代表監督なのかは知らないが、今もキューバ全土を回って
選手を発掘しているそうだ。
試合は順調に進んでいく。
チーム・サンティアゴの野球は荒くれている。
とにかくノーガードで打ちまくる。次の塁を闇雲に狙い続ける。
バントより強振、繊細なピッチングよりも大ざっぱに直球勝負。
こういったチーム感覚が、どこかサッカーのチーム・パレルモと
非常によく似ている気がした。
そして、どうにもVIP席の雰囲気が重いので一般観客席に行ってみると
観客席全体を陣取った港街独特の荒くれたイメージの男たちが
怒声、罵声、歓声を選手たちに浴びせ続けている。
その中の太鼓や笛を持っている一団が、即興でサルサのリズムを奏で
それに合わせて踊っている周囲の観客たちは
トランス状態に陥っているのか、狂ったように踊っている。
それから観客席全体に漂う煙草、酒、そして大麻の香りたち。
パレルモのサッカー場と同じ香りだ。
薄暗い照明に照らされているスタジアムが、より一層如何わしさを醸し出す。
そして点が入るたびに球場全体が
観客たちの足踏みで「ゴォー」と音を立てて揺れる。
まるでヨーロッパのサッカーを観戦している錯覚に陥った。
野球観戦はサッカーなどと違って試合時間が長いので
やはりどこか緊張感に欠け、のどかな雰囲気がつきものだが
ここサンティアゴのスタジアムにはそういったものがまるでない。
殺伐とした、荒くれ男たちの社交場には
殺るか殺られるかの、薄暗いサルサのリズムが流れている。
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